#include <sys/types.h> #include <sys/ipc.h> #include <sys/sem.h> int semop(int semid, struct sembuf *sops, unsigned nsops); int semtimedop(int semid, struct sembuf *sops, unsigned nsops, struct timespec *timeout);
glibc 向けの機能検査マクロの要件 (feature_test_macros(7) 参照):
unsigned short semval; /* セマフォ値 */ unsigned short semzcnt; /* ゼロを待つプロセス数 */ unsigned short semncnt; /* 増加を待つプロセス数 */ pid_t sempid; /* 最後に操作を行なったプロセス */semop() は semid で指定されたセマフォ集合の選択されたセマフォに対して操作を行う。 sops は nsops 個の要素の配列を指し、配列の各要素は個々のセマフォに 対する操作を示す。その型は struct sembuf で、次のメンバを持つ:
unsigned short sem_num; /* セマフォ番号 */ short sem_op; /* セマフォ操作 */ short sem_flg; /* 操作フラグ */sem_flg には IPC_NOWAIT と SEM_UNDO が設定できる。 SEM_UNDO が指定された操作は、そのプロセスが終了した時に自動的に取り消される。
sops に含まれる操作の集合は、 配列の順序 で、 アトミックに 実行される。 すなわち、全ての操作が完全に実行されるか、全く実行されないかの どちらかとなる。
全ての操作が直ちに実行できない場合のこのシステムコールの振る舞いは 個々の操作の sem_flg フィールドに IPC_NOWAIT が存在するかによって決まり、後述のようになる。
それぞれの操作はセマフォ集合の sem_num番目 のセマフォに対して実行される。セマフォ集合の最初のセマフォには 番号 0 が振られる。 そして操作は三種類あり、 sem_op の値で区別される。
sem_op が正の整数の場合、操作としてその値をセマフォの値 (semval) に加える。さらにこの操作に SEM_UNDO が指定されている場合は、システムはこのセマフォの プロセス・アンドゥ数 (semadj) を更新する。 この操作は必ず実行でき、プロセスの停止は起こらない。 呼び出し元プロセスは対象のセマフォ集合を変更する許可がなければならない。
sem_op が 0 の場合、「ゼロまで待つ」操作である。この場合、プロセスは そのセマフォ集合に対する読み込み許可がなければならない。 semval が 0 ならば、操作は直ちに行われる。 semval が 0 でない場合、 sem_flg に IPC_NOWAIT が指定されていれば、 semop() は失敗し、 errno に EAGAIN が設定される (このとき sops に対する操作は全く実行されない)。 sem_flg に IPC_NOWAIT が指定されていない場合、 semzcnt (セマフォ値が 0 になるのを待っているプロセスの数) を 1 増加させて、 以下のいずれかが起こるまでプロセスを停止 (sleep) する。
sem_op が 0 未満の場合、プロセスにはそのセマフォ集合を変更する許可がなければ ならない。 semval が sem_op の絶対値以上の場合は、操作は直ちに実行される: semval から sem_op の絶対値が減算される。 さらに、この操作に SEM_UNDO が指定されている場合は、このセマフォのプロセス・アンドゥ数 (semadj) を更新する。 semval が sem_op の絶対値より小さく、 sem_flg に IPC_NOWAIT が指定された場合は、 semop() は失敗し、 errno に EAGAIN が設定される (このとき sops の操作は全く実行されない)。 IPC_WAIT が指定されていなければ、 semncnt (このセマフォの値が増加するのを待っているプロセス数のカウンタ) を 1 増加させて、以下のいずれかが起こるまでプロセスを停止 (sleep) する。
操作が成功した場合、 sops が指す配列によって操作対象となった各セマフォの sempid メンバーには呼び出したプロセスのプロセス ID が設定される。 さらに sem_otime に現在時刻が設定される。
semtimedop() 関数の振る舞いは semop() と全く同じだが、 呼び出し元プロセスが停止する場合、停止期間の上限が timeout 引き数の指す timespec 構造体で指定された時間となる点だけが異なる。 指定した制限時間に達した場合は、 semtimedop() は失敗し、 errno に EAGAIN が設定される (このとき sops の操作は実行されない)。 timeout 引き数が NULL の場合、 semtimedop() 関数の振る舞いは semop() 関数と全く同じになる。
semop() はシグナルハンドラによって中断された後に、 決して自動的に再開することはない。 たとえシグナルハンドラの設定時に SA_RESTART フラグがセットされていても再開することはない
semadj はプロセスごとの整数で、 SEM_UNDO フラグを設定して実行された全てのセマフォ操作の(負数の)カウンタである。 semctl(2) に SETVAL または SETALL を指定し、セマフォの値が 直接設定された場合には、全てのプロセスにおいて対応する semadj の値がクリアされる。
あるセマフォの semval, sempid, semzcnt, semnct の値はいずれも、適切な操作を指定して semctl(2) を呼び出すことで取得できる。
セマフォ集合のリソースに関する制限のうち、 semop() に影響を及ぼすものを以下に挙げる:
以下の値に関しては実装依存の制限はない。 終了時の調整 (adjust on exit) の最大値 (SEMAEM)、 システム全体のアンドゥ構造体の最大数 (SEMMNU)、 プロセスあたりのアンドゥ構造体の最大数。
カーネル 2.6.x (x <= 10) には、ある状況においてセマフォ値が 0 になるのを 待っているプロセスが、セマフォ値が実際に 0 になったときに起床 (wake up) されない、というバグがある。このバグはカーネル 2.6.11 で修正されている。
struct sembuf sops[2]; int semid; /* Code to set semid omitted */ sops[0].sem_num = 0; /* Operate on semaphore 0 */ sops[0].sem_op = 0; /* Wait for value to equal 0 */ sops[0].sem_flg = 0; sops[1].sem_num = 0; /* Operate on semaphore 0 */ sops[1].sem_op = 0; /* Increment value by one */ sops[1].sem_flg = 0; if (semop(semid, &sop, 2) == -1) { perror("semop"); exit(EXIT_FAILURE); }