薄膜・表面物性研究室では、固体薄膜を対象にして、 構造や物性の研究を行っています。 薄膜とは、厚さが 1μm 以下の、ごく薄い膜のことです。 多くの場合、物質を真空中で一旦気化させ、 その蒸気流を凝縮させて作ります(真空蒸着法)。 新しい物質を作ることもできます。面白い機能を持たせられます。 高価な物質でも安く製造することができます。 ...というような理由で、 現代の工業社会のさまざまな分野で利用されています。
薄膜は、“板状の材料をさらに薄くしたもの”ではありません。 私たちが普通に目にみえる程度の大きさの固体材料(バルク材料)からは 考えられないような振る舞いを、薄膜が持つことがあります。 逆に、バルク材料と同じような性質を持った 理想的な薄い膜を作ることがむしろ難しい課題のひとつです。 当研究室では、蒸気原子が凝縮して薄膜の形成される過程や、 できた薄膜の構造や性質(力学的・光学的・電気的 etc.)を調べています。 そして、それらが作製方法によってどのように変化するかを比較することによって、 より優れた機能を持った薄膜を作製したり、 それを応用する技術を考案していきたいと考えています。
化合物や合金薄膜の作製プロセスについて、興味を持って仕事をしています。 特に低圧プラズマのイオンを加速し、 材料物質にぶつけて気化させるスパッタリング法では、 エネルギーの高い原子やクラスターを作ることができるので、 真空蒸着法より優れた性質の薄膜を作ることができます。 しかし、薄膜の組成や構造は、 気体圧力やプラズマの条件によって大きく変わります。
最近は、六硼化ランタンという物質をスパッタ製膜する際の組成変化に対して、 実験と計算機シミュレーションを組み合わせた仕事をしています。 薄膜の表面の粗さ(ラフネス)の特性も、 薄膜の成長過程を反映しながら数学的な面白さも見られるので、 原子レベルの形状計測技術の開発とあわせて関心を持って研究を進めています。
気体原子が下地物体(基板という)の上に だんだんに降り積もって厚みを増して膜状になっていくわけですが、 冬に窓ガラスの表面に霜の板ができるのと同様の機構です。 ただし、同じ水の固体といっても、湖水の表面にできる氷の板とは違って、 霜はいろいろの面白い形態を示します。 つまり、表面や膜の原子配列の形態・構造は、 材料によって決まるというものではなく、 下地物質や温度によっていろいろと変化します。 比較的研究の進んでいる物質は、 半導体けい素(シリコン)の結晶表面に降らせた金属原子の場合です。 堆積する材料が合金になると、特徴がまた変わってきます。 薄膜を実用化する技術上の要点のひとつは下地からはがれない性能--密着性--です。 特に力学的刺激や化学的刺激に対する耐久性は重要で、 薄膜の密着性や耐摩耗性をマイクロスクラッチ試験機という新しい装置で調べています。
半導体結晶上の合金膜については、インジウムと銅との合金に関して、 低速電子線回折 (Low Energy Electron Diffraction) で構造を調べています。 表面の形態や混合の様子は、 原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy)と エックス線光電子分光 (X-ray Photoemission Spectroscopy) という技術で評価しています。
成蹊学園吉祥寺キャンパスへの交通は 学園のアクセスマップ をご覧下さい。
薄膜・表面物性研究室は 12 号館 5F の 2505 室に、中野の居室は同じフロアの 2503A 室にあります。 キャンパスマップ のページをご覧下さい。
Google Map による衛星写真 pin in the map
薄膜・表面物性研究室のホームページへ 物質生命理工学科のホームページへ 成蹊大学のホームページへ |