3 限、「分子エレクトロニクスへの挑戦」というタイトルで塚田先生。
大変おもしろかった。
最初 STM のことから。まず先端形状による像の変化、
Ag/Si(111) のトライマーの件など、これらは自分が学生の頃に読み聞きしたお話。
続いて tip bias による原子引き抜きについて。
tip (Al) に対して subst. (Si) を正に bias
すると、先端の Si 原子がカチオン化、
tip 周りの electron dens. が増えて二重層ができ、
引き抜きのバリアが下がるとのこと。
負にバイアスした場合は、アニオン化は起こりにくいので
バリアはあまり変わらない
*1
という結果。
ついで金属の量子細線におけるコンダクタンスの量子化。
Au 細線を引っ張って細くした時の実験結果が有名だが、
この件に関する理論面からの解釈について。
Recursion Transfer Matrix Method という計算手法を用いるそうなのだが、
おそらく入力・出力の電子波を展開、係数行列を対角化して入射・反射・透過の
固有関数に分解、そのときの対角成分の自乗が透過係数に対応する、
ということをやっている
*2
らしい。
そのとき前にのる係数が 2e^2/h になるそうで、
なのでこの透過係数が 100% に近いような場合は、
次々にチャネルが空くことによってコンダクタンスがステップ状に変化する、
と理解できる。
ただし透過係数は必ずしも 0% / 100% に近くなるものではない。
Al, Na などに関する計算例など。
次、Si 上に作ったナノワイヤの電子系について。
例えば H 終端 Si 表面の H を電圧ではがして dangling bond のチャネルを
作ったりすることが実験的には可能なそうなのだが、
ここに例えば As と K をうまく着けてあげると、
幅の狭いバンドが半分満たされたような状況を作ることができるらしく、
理論的には強磁性を持たせることが可能かもしれない、らしい。
分子架橋における I-V 特性。
特にベンゼン環を持つ分子では、
内部ループ電流が誘起されるという理論的予測があり、
これによって magnetic moment を持たせることができるかもしれない、とのこと。
例えばフラーレンとかだと、適当な入力・出力チャネルを作って
このループ電流をみてみると、m.m. が一平面上に乗る
*3
ような結果が得られたりするらしい。
カーボンナノチューブの電気伝導。
CN ではグラファイトに円筒方向での周期性が入ることにより、
そっち方向の波数が量子化される。
これをグラファイトの 2D E-k 図と比較すると、
電気伝導に寄与する K 点をこの許容波数が横切るかによって、
metal となるかどうかが決まるらしい。
螺旋型のチューブ (五員環と七員環が適当に混ざる)
の伝導性もこのような切断→グラファイトへの展開によって理解でき、
このへんからナノチューブドーナツの電流についても関連付けて議論。
NC 系では、ある程度以上の磁場をかけると
AB 効果によって電子の波数の位相が shift し、
ループ電流の片方が死んで永久電流が流れたりする現象も予測されているとのこと。
最後にチャネル途中で位相情報が失われてしまうような伝導 (coulomb blockade
とか単電子トランジスタとかのアレ) に関してもちょっと紹介があった。
以上眺めてくると、塚田先生の一連のお仕事が、
「量子サイズ構造における電流」
という太い流れに沿って行われていることがわかる。
こんな風に得意分野を生かしつつ、
最先端の成果を生み出しつづけているのはやはりすばらしいなあ、
というのが感想。
ちなみに若林学部長も聴講されていたのだが、
お二人は同級生だったらしい。うひひ。
*1: むしろ計算上は上がることもあるが、
この簡単な説明はまだついていないとのこと。
*2: 理解が間違っているかもしれないが、
ここに書いておけば今度佐々木先生が教えてくださると期待 :-)
*3: 何らかのベクトルとの内積が一定になる条件とかがあるのかしら。
ワカテックから到着。
千代田交易さんは担当の清水さんが直接持ってきてくれて、
いろいろとぶっちゃけた話を聞かせてもらった。
コマツ方面からも電話があったが、
今回は決めちゃった旨お返事。
今後もあるのでカタログ等を送っていただくようにお願いした。
SSMC からの依頼。藤本君と。
まず pure Ni。clean 表面を出すまでに、
3keV Raster(X=4 Y=3) で 10min のスパッタ、
その後測定。BE 1keV で 150pA とか
*4
なので、500eV の測定はとりあえずパス。
だいたい γ=0.3〜0.4 程度の値にはなっているようだが、
他のサンプルと有意な差が出るかどうかは他を見てみないとわからんな。
明日測定する pure Nb を入れて撤退。
*4: これも MgO やってた頃の一次電流に比べると半分くらいなのだが…