はじめに

Linux には JM プロジェクト という作業グループがあります。 ここでは Linux で使う各種マニュアルを日本語化しちゃおう、 という作業がなされています。

私も細々と参加させていただいているのですが、 翻訳の数をこなすうち、だんだん自分なりに効率の良い作業、 というものができてきましたので、 そのあたりをまとめてみました。

翻訳するマニュアルを取得する

JM プロジェクトでは、 最新版のマニュアルを翻訳することが推奨されていますので、 できれば自分で探してきたいものです。 私は基本的に二つの方法を利用しています。

  1. archie で探す。

    手元に archie コマンドをインストールしてしまうのが 長い目で見ると一番楽でしょうが、 WWW から archie を使うサービス などもありますので、適宜利用しましょう。

  2. ftp サイトの ls-lR ファイルを使う。

    Sunsite (国内ミラー)TSX-11 (国内ミラー) などの linux 関連で有名な ftp サイトから ls-lR ファイルを取ってきて、 手元に置いておきます。 必要なときにこのファイルを grep なり less なりして、 ファイルの見当をつけます。

    実際のファイルの内容は、 ftp アクセスして *.lsm ファイルを見て確認します。 この際の ftp クライアントには ncftp がお薦めです。 less hoge.lsm というのがオンラインで実行できます。

GNU ものなど Linux に限定されないアーカイブは前者、 Linux に特化したアーカイブは後者で探すと効率が良いでしょう。

翻訳前の処理

マニュアルを翻訳する前に、私は以下のような作業を行っています。 これを行うようになったのは、

という二つの動機によります。

以下では作業ディレクトリとして ~/jman を想定しています。 翻訳するページは GNU binutils から ar.1 としましょう。

  1. とってきたアーカイブから man ページを取り出します。 この際、作業ディレクトリの下にアーカイブ専用の (例えば ~/jman/binutils/ など) ディレクトリを作って、そこにまとめておくと良いでしょう。

  2. 原文にコメントをつけます。 後で取るときにオリジナルのコメントとの区別をつけるため 「.\"O 」のようにO を補足しておくのがミソです。 この際、以下のような awk スクリプトを利用しています。

    #!/usr/bin/awk -f
    {
    	if ($0 ~ /^\.\\"/) {
    		print
    	} else {
    		printf(".\\\"O %s\n", $0)
    	}
    }
    

    これを commentate とかいう名前のコマンドにしておき、 作業ディレクトリから

    commentate binutils/ar.1 > ar.1
    

    のように実行して、作業ファイル ~/jman/ar.1 を作成します。

  3. 以上の作業では原文はすべてコメント化されてしまいますが、 .TH 行や .TP 行のように、 そのまま翻訳版にも残しておきたい行もあると思います。 このような行を元に戻す作業には vi を用いるのが楽でしょう (個人的なお薦めは jvim です)。 作業ディレクトリに

    map ^T 5xj
    

    というような内容の .vimrc ファイルを置いておきます (^T は Ctrl-T です)。 そして vi でコメント化した roff ファイルを開き、 アンコメントしたい行の先頭で Ctrl-T を打てば、 次々に取っていけます。失敗した場合は u で undo。

翻訳作業と後処理

以上のようにして作ったファイルに対して、 実際の翻訳作業を行います。これは好きなエディタで構わないと思います (私は主に mule を使っています)。 作業時には RCS のようなバージョン管理システムを使うと良いでしょう。 詳細は man rcs ;-)。

作業中にファイルを整形してみたければ、作業ディレクトリで

man ./ar.1

すれば良いです。 Debian で man-db を使っている場合は

man -l ./ar.1

となります。

手元での訳が終了したら jman ML にポストしましょう。 投稿の際の手続きについては JM の 翻訳の指針 を参考にして下さい。 ML でコメントが付いたら反映させ、 校正版を投稿するときに原文を取ります。

grep -v '^\.\\"O ' ar.1 > ar.1.release

のようにしてできる ar.1.release をポストすると良いでしょう。


中野武雄 <nakano@apm.seikei.ac.jp> (updated: 1998-02-27)

「Linux 私家版管理メモ」へ