プロセスが /dev/ptmx をオープンすると、そのプロセスには 擬似端末マスタ (pseudo-terminal master; PTM) へのファイル・ ディスクリプタが返され、 /dev/pts ディレクトリに擬似端末スレーブ (pseudo-terminal slave; PTS) デバイスが作成される。 /dev/ptmx をオープンして得られるファイル・ディスクリプタは それぞれ独立の PTM であり、対応する PTS を各々持つ。 PTS のパス名は、PTM のファイル・ディスクリプタを ptsname(3) に渡すと知ることができる。
擬似端末スレーブをオープンする前に、必ず、マスタのファイル・ディスクリプタを 引き数として grantpt(3) と unlockpt(3) を呼び出さなければならない。
擬似端末のマスタとスレーブの両方がオープンされた後は、スレーブは、 プロセスに対して、実端末 (real terminal) と全く同じインタフェースを提供する。
スレーブに書かれたデータはマスタ・ディスクリプタに対する入力として扱われ、 マスタに書かれたデータはスレーブに対する入力として扱われる。
実例をあげると、擬似端末は xterm(1) のような端末エミュレータを実装するのに使用されている。 端末エミュレータでは、擬似端末のマスタから読み込まれたデータは、 アプリケーションにとって実端末のデータと全く同じもののように見える。 また、 sshd(8) のようなリモート・ログイン用のプログラムの実装では、 擬似端末マスタから読み込まれたデータは、ネットワークを経由して、 端末や端末エミュレータに接続されているクライアント・プログラムに送信される。
擬似端末は、 (su(8) や passwd(8) のような) 通常はパイプからの入力を拒否するプログラムに、 入力を送信するためにも使用できる。
この Unix98 スキームが導入される前は、マスタ擬似端末は /dev/ptyp0, ... 、スレーブ擬似端末は /dev/ttyp0, ... と呼ばれており、あらかじめたくさんのデバイス・ノードを割り当てて おく必要があった。