MQ_OVERVIEW
Section: Linux Programmer's Manual (7)
Updated: 2006-02-25
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名前
mq_overview - POSIX メッセージキューの概要
説明
POSIX メッセージキューを使用すると、プロセス間で
メッセージの形でのデータのやり取りを行うことができる。
この API は System V メッセージキューの API
(msgget(2),
msgsnd(2),
msgrcv(2)
など) とは異なるものだが、同様の機能を提供する。
メッセージキューの作成とオープンは
mq_open(3)
を使って行う。この関数は
メッセージキュー記述子 (message queue descriptor)
(mqd_t)
を返す。これ以降のコールでは、オープンされたメッセージキューは
メッセージキュー記述子
を使って参照される。
各メッセージキューは
/somename
の形の名前で区別することができる。
mq_open(3)
に同じ名前を渡すことで、2つのプロセスで同一のキューを
操作することができる。
メッセージのキューへの送受信は
mq_send(3)
と
mq_receive(3)
を使って行う。プロセスがキューの使用を終えるときには、
mq_close(3)
を使ってキューをクローズする。キューがもはや不要となった場合には、
mq_unlink(3)
を使ってキューを削除できる。キューの属性は
mq_getattr(3)
で取得でき、 (制限はあるが)
mq_setattr(3)
で変更できる。
mq_notify(3)
を使うことで、空のキューへのメッセージ到着を非同期で
通知するように要求することもできる。
メッセージキュー記述子は
オープンメッセージキュー記述 (open message queue description)
への参照である
(open(2)
も参照)。
fork(2)
実行後は、子プロセスは親プロセスのメッセージキュー記述子のコピーを継承する。
これらの記述子は、親プロセスの対応する記述子と同じオープンメッセージキュー
記述を参照している。親プロセスと子プロセスの対応する記述子は、フラグ
(mq_flags)
を共有する。なぜなら、フラグはオープンメッセージキュー記述に
関連付けられているからである。
各メッセージにはそれぞれ
優先度 (priority)
があり、メッセージの受信プロセスへの配送は常に
優先度の高いメッセージから順に行われる。
メッセージの優先度は 0 (低優先) から
sysconf(_SC_MQ_PRIO_MAX) - 1
(高優先) の値を持つ。
Linux では、
sysconf(_SC_MQ_PRIO_MAX)
は 32768 を返すが、
POSIX.1-2001 で要求されているのは 0 から 31 までの優先度を
実装することだけであり、実装によってはこの範囲の優先度しか
対応していない。
この節の残りでは、POSIX メッセージキューの Linux の実装の詳細
について説明する。
ライブラリインタフェースとシステムコール
ほとんどの場合、上記の
mq_*()
ライブラリインタフェースは、同じ名前の下位層のシステムコールを
使って実装されている。この枠組みにあてはまらないものを
以下の表に示す。
バージョン
Linux では POSIX メッセージキューはカーネル 2.6.6 以降でサポートされている。
glibc ではバージョン 2.3.4 以降でサポートされている。
カーネルの設定
POSIX メッセージキューのサポートは、カーネルの設定 (configuration)
オプション
CONFIG_POSIX_MQUEUE
で設定可能である。このオプションはデフォルトでは有効である。
持続性
POSIX メッセージキューはカーネル内で保持される。
mq_unlink(3)
で削除されなければ、メッセージキューは
システムがシャットダウンされるまで存在し続ける。
リンク
POSIX メッセージキュー API を使用したプログラムは
cc -lrt
でコンパイルし、リアルタイムライブラリ
librt
とリンクしなければならない。
/proc インタフェース
以下のインタフェースを使って、POSIX メッセージキューが消費するカーネル
メモリの量を制限することができる。
- /proc/sys/fs/mqueue/msg_max
-
このファイルを使って、一つのキューに入れられるメッセージの最大数の
上限値を参照したり変更したりできる。この値は、
mq_open(3)
に渡す
attr->mq_maxmsg
引き数に対する上限値として機能する。
msg_max
のデフォルト値および最小値は 10 である;
上限は「埋め込みの固定値」(HARD_MAX) で
(131072 / sizeof(void *))
(Linux/86 では 32768) である。
この上限は特権プロセス
(CAP_SYS_RESOURCE)
では無視されるが、埋め込みの固定値による上限は
どんな場合にでも適用される。
- /proc/sys/fs/mqueue/msgsize_max
-
このファイルを使って、メッセージの最大サイズの上限値を
参照したり変更したりできる。
この値は、
mq_open(3)
に渡す
attr.mq_msgsize
引き数に対する上限値として機能する。
msgsize_max
のデフォルト値および最小値は 8192 バイトである;
上限は INT_MAX (Linux/86 では 2147483647) である。
この上限は特権プロセス
(CAP_SYS_RESOURCE)
では無視される。
- /proc/sys/fs/mqueue/queues_max
-
このファイルを使って、作成することができるメッセージキューの数に
対するシステム全体での制限を参照したり変更したりできる。
一度この上限に達すると、新しいメッセージキューを作成できるのは
特権プロセス
(CAP_SYS_RESOURCE)
だけとなる。
queues_max
のデフォルト値は 256 であり、
0 から INT_MAX の範囲の任意の値に変更することができる。
リソース制限
リソース上限
RLIMIT_MSGQUEUE
は、プロセスの実 UID に対応する全メッセージキューが消費する
メモリ空間の量に対して上限を設定する。
getrlimit(2)
を参照。
メッセージキュー・ファイルシステムのマウント
Linux では、メッセージキューは仮想ファイルシステム内に作成される
(他の実装でも同様の機能が提供されているものもあるが、
詳細は違っているだろう)。
以下のコマンドを使うことで、このファイルシステムをマウントできる:
$ mkdir /dev/mqueue
$ mount -t mqueue none /dev/mqueue
マウントしたディレクトリのスティッキービット (sticky bit) は
自動的にオンとなる。
メッセージキュー・ファイルシステムのマウント後は、ファイルに対して
通常使うコマンド (例えば
ls(1)
や
rm(1))
を使って、システム上のメッセージキューを表示したり
操作したりできる。
ディレクトリ内の各ファイルの内容は 1行であり、
キューに関する情報が表示される。
$ ls /dev/mqueue/mymq
QSIZE:129 NOTIFY:2 SIGNO:0 NOTIFY_PID:8260
$ mount -t mqueue none /dev/mqueue
各フィールドの詳細は以下の通りである:
- QSIZE
-
キューに入っている全メッセージの合計バイト数。
- NOTIFY_PID
-
この値が 0 以外の場合、この値の PID を持つプロセスが
mq_notify(3)
を使って、非同期のメッセージ通知を行うように設定したことを示す。
どのように通知が行われるかは、以下のフィールドにより決定される。
- NOTIFY
-
通知方法:
0 は
SIGEV_SIGNAL;
1 は
SIGEV_NONE;
2 は
SIGEV_THREAD
- SIGNO
-
SIGEV_SIGNAL
に使用されるシグナル番号。
メッセージキュー記述子のポーリング
Linux では、メッセージキュー記述子は実際はファイル記述子 (file descriptor)
であり、
select(2),
poll(2),
epoll(7)
を使って監視することができる。
この機能の移植性はない。
準拠
POSIX.1-2001.
注意
System V メッセージキュー
(msgget(2),
msgsnd(2),
msgrcv(2)
など) はプロセス間でメッセージをやり取りするための古い API である。
POSIX メッセージキューは System V メッセージキューよりもうまく
設計されたインタフェースを提供している。
一方で、POSIX メッセージキューは System V メッセージキューと比べると
利用できるシステムが少ない (特に、古いシステムでは少ない)。
例
各種のメッセージキュー関数を使用した例が
mq_notify(3)
に記載されている。
関連項目
getrlimit(2),
mq_getsetattr(2),
mq_close(3),
mq_getattr(3),
mq_notify(3),
mq_open(3),
mq_receive(3),
mq_send(3),
mq_unlink(3),
poll(2),
select(2),
epoll(4)
Index
- 名前
-
- 説明
-
- ライブラリインタフェースとシステムコール
-
- バージョン
-
- カーネルの設定
-
- 持続性
-
- リンク
-
- /proc インタフェース
-
- リソース制限
-
- メッセージキュー・ファイルシステムのマウント
-
- メッセージキュー記述子のポーリング
-
- 準拠
-
- 注意
-
- 例
-
- 関連項目
-
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Time: 04:31:53 GMT, November 19, 2007