#include <asm/types.h>
#include <sys/socket.h>
#include <linux/netlink.h>
netlink_socket = socket(PF_NETLINK, socket_type, netlink_family);
netlink はデータグラム指向のサービスである。 socket_type には SOCK_RAW と SOCK_DGRAM の両方とも指定可能である。 しかし netlink プロトコルはデータグラムと raw ソケットの区別をしない。
netlink_family は、通信するカーネルモジュールや netlink グループの選択に用いる。 現在割り当てられている netlink ファミリーは以下の通り。
netlink メッセージはバイトストリームからなり、 一つ以上の nlmsghdr ヘッダと、それに対応するペイロード (payload) が含まれる。 バイトストリームには、標準の NLMSG_* マクロによってのみアクセスすべきである。 より詳しい情報は netlink(3) を見よ。
マルチパートメッセージ (一つ以上の nlmsghdr ヘッダと、それに対応するペイロードが 一つバイトストリームに含まれる) においては、 先頭のヘッダ・後続のヘッダには NLM_F_MULTI フラグがセットされる。ただし最後のヘッダだけは例外で、 NLMSG_DONE タイプとなる。
それぞれの nlmsghdr の後にはペイロードが続く。
struct nlmsghdr { __u32 nlmsg_len; /* ヘッダを含むメッセージの長さ */ __u16 nlmsg_type; /* メッセージの内容のタイプ */ __u16 nlmsg_flags; /* 追加フラグ */ __u32 nlmsg_seq; /* シーケンス番号 */ __u32 nlmsg_pid; /* 送信プロセスの PID */ };
nlmsg_type は標準のメッセージタイプのどれか一つである: NLMSG_NOOP メッセージは無視される。 NLMSG_ERROR メッセージはエラーを示し、ペイロードには nlmsgerr 構造体が入る。 NLMSG_DONE メッセージはマルチパートメッセージの終了を伝える。
struct nlmsgerr { int error; /* 負または 0 の errno は応答を表す */ struct nlmsghdr msg; /* エラーを起こしたメッセージのヘッダ */ };
ある netlink ファミリーで指定できるメッセージタイプは、 通常もっと多い。これらに関しては適切な man ページを見てほしい。 たとえば NETLINK_ROUTE に関しては rtnetlink(7) に書いてある。
nlmsg_flags
の標準フラグビット
---------------------------------
NLM_F_REQUEST | 要求メッセージ全てでセットされなければならない。 |
NLM_F_MULTI |
このメッセージはマルチパートメッセージの一部である。
マルチパートメッセージは
NLMSG_DONE
で終端する。
|
NLM_F_ACK | 成功した場合の応答を要求する。 |
NLM_F_ECHO | この要求をエコーする。 |
GET 要求における追加フラグビット
-------------------------------------
NLM_F_ROOT | 単一のエントリではなくテーブル全体を返す。 |
NLM_F_MATCH |
メッセージの内容で渡された基準 (criteria) にマッチする
全てのエントリを返す。
まだ実装されていない。
|
NLM_F_ATOMIC | テーブルのアトミックなスナップショットを返す。 |
NLM_F_DUMP | 便利なマクロ。(NLM_F_ROOT|NLM_F_MATCH) と同じ。 |
NLM_F_ATOMIC を使う場合は、 CAP_NET_ADMIN 権限を持つか実効ユーザー ID が 0 でなければならない点に注意すること。
NEW 要求における追加フラグビット
-------------------------------------
NLM_F_REPLACE | 現存のオブジェクトを置換する。 |
NLM_F_EXCL | すでにオブジェクトがあったら置換しない。 |
NLM_F_CREATE | まだオブジェクトがなければ作成する。 |
NLM_F_APPEND | オブジェクトリストの最後に追加する。 |
nlmsg_seq と nlmsg_pid はメッセージの追跡に使用される。 nlmsg_pid はメッセージの送信元を表す。 メッセージが netlink ソケットで送信されている場合、 nlmsg_pid とプロセスの PID は 1:1 の関係ではない点に注意すること。 より詳しい情報は、 「アドレスのフォーマット」 のセクションを参照すること。
nlmsg_seq と nlmsg_pid は netlink のコアには見えない (opaque)。
netlink は信頼性の高いプロトコルではない。 netlink はメッセージを行き先に届けるために最善を尽くすが、 メモリが足りなかったりエラーが起こったりすると メッセージを取りこぼすこともある。 信頼性の高い転送を行いたいときは、 送信者は受信者に応答を要求することもできる。 これには NLM_F_ACK フラグをセットする。 応答は NLMSG_ERROR パケットのエラーフィールドを 0 にしたものになる。 アプリケーションは自分自身のメッセージを受けたときには、 応答を生成しなければならない。 カーネルは失敗したパケットに対して、 NLMSG_ERROR メッセージを送ろうとする。 ユーザープロセスはこの慣習にも従う必要がある。
しかし、どのような場合でもカーネルからユーザーへの 信頼性の高い転送は不可能である。 ソケットバッファが満杯の場合、カーネルは netlink メッセージを送信できない。 メッセージは取りこぼされて、カーネルとユーザー空間プロセスは、 カーネルの状態についての同じビューを持つことができなくなる。 これが起こったこと (recvmsg(2) によって ENOBUFS エラーが返される) を検知して再び同期させるのは、 アプリケーションの責任である。
struct sockaddr_nl { sa_family_t nl_family; /* AF_NETLINK */ unsigned short nl_pad; /* 0 である */ pid_t nl_pid; /* プロセス ID */ __u32 nl_groups; /* マルチキャストグループマスク */ };
nl_pid は netlink ソケットのユニキャストアドレスである。 行き先がカーネルの場合は、常に 0 である。 ユーザー空間プロセスの場合、通常は nl_pid は行き先のソケットを所有しているプロセスの PID である。 ただし、 nl_pid はプロセスではなく netlink ソケットを同定する。 プロセスが複数の netlink ソケットを所有する場合、 nl_pid は最大でも一つのソケットのプロセス ID としか等しくならない。 nl_pid を netlink ソケットに割り当てる方法は 2 つある。 アプリケーションが bind(2) を呼ぶ前に nl_pid を設定する場合、 nl_pid が一意であることを確認するのはアプリケーションの責任となる。 アプリケーションが nl_pid を 0 に設定した場合、カーネルがこの値を割り当てる。 カーネルはプロセスが最初にオープンした netlink ソケットに対してプロセス ID を割り当て、 それ以降にプロセスが作成した全ての netlink ソケットにも一意な nl_pid を割り当てる。
nl_groups はビットマスクで、すべてのビットが netlink グループ番号を表す。 それぞれの netlink ファミリーは 32 のマルチキャストグループのセットを持つ。 それぞれの netlink ファミリーは 32 のマルチキャストグループの セットを持つ。 bind(2) がソケットに対して呼ばれると、 sockaddr_nl の nl_groups フィールドには listen したいグループのビットマスクがセットされる。 デフォルトの値は 0 で、マルチキャストを一切受信しない。 sendmsg(2) や connect(2) によって、あるソケットからメッセージをマルチキャストしたいときは、 nl_groups に送信したいグループのビットマスクをセットすればよい。 実効ユーザー ID が 0 か、 CAP_NET_ADMIN 権限を持つユーザーのみが netlink マルチキャストグループに 送信したり、これを listen したりすることができる。 マルチキャストグループ向けメッセージを受信した場合、これ対する応答は 送り主の PID とマルチキャストグループとに送り返すべきである。
Linux 2.0 は、もっと原始的なデバイスベースの netlink インターフェースを サポートしていた (これも互換性のために今でも使用できる)。 古いインターフェースに関してはここでは記述しない。
NETLINK_SELINUX は Linux 2.6.4 で登場した。
NETLINK_AUDIT は Linux 2.6.6 で登場した。
NETLINK_KOBJECT_UEVENT は Linux 2.6.10 で登場した。
NETLINK_W1, NETLINK_FIB_LOOKUP は Linux 2.6.13 で登場した。
NETLINK_INET_DIAG, NETLINK_CONNECTOR, NETLINK_NETFILTER は Linux 2.6.14 で登場した。
NETLINK_GENERIC, NETLINK_ISCSI は Linux 2.6.15 で登場した。
struct sockaddr_nl sa; memset(&sa, 0, sizeof(sa)); snl.nl_family = AF_NETLINK; snl.nl_groups = RTMGRP_LINK | RTMGRP_IPV4_IFADDR; fd = socket(AF_NETLINK, SOCK_RAW, NETLINK_ROUTE); bind(fd, (struct sockaddr*)&sa, sizeof(sa));
次の例では、netlink メッセージをカーネル (pid 0) に送る方法を示している。 応答を追跡する際の信頼性を高めるために、アプリケーションが メッセージのシーケンス番号を正しく処理しなければならない点に注意すること。
struct nlmsghdr *nh; /* 送信する nlmsghdr とペイロード */ struct sockaddr_nl sa; struct iovec iov = { (void *) nh, nh->nlmsg_len }; struct msghdr msg; msg = { (void *)&sa, sizeof(sa), &iov, 1, NULL, 0, 0 }; memset(&sa, 0, sizeof(sa)); sa.nl_family = AF_NETLINK; nh->nlmsg_pid = 0; nh->nlmsg_seq = ++sequence_number; /* NLM_F_ACK を設定することで、カーネルに応答を要求する */ nh->nlmsg_flags |= NLM_F_ACK; sendmsg(fd, &msg, 0);
最後は、netlink メッセージの読み込みの例である。
int len; char buf[4096]; struct iovec iov = { buf, sizeof(buf) }; struct sockaddr_nl sa; struct msghdr msg; struct nlmsghdr *nh; msg = { (void *)&sa, sizeof(sa), &iov, 1, NULL, 0, 0 }; len = recvmsg(fd, &msg, 0); for (nh = (struct nlmsghdr *) buf; NLMSG_OK (nh, len); nh = NLMSG_NEXT (nh, len)) { /* マルチパートメッセージの終わり */ if (nh->nlmsg_type == NLMSG_DONE) return; if (nh->nlmsg_type == NLMSG_ERROR) /* 何らかのエラー処理を行う */ ... /* ペイロードの解析を続ける */ ... }
libnetlink に関する情報は ftp://ftp.inr.ac.ru/ip-routing/iproute2*
libnl に関する情報は http://people.suug.ch/~tgr/libnl/
RFC 3549 "Linux Netlink as an IP Services Protocol"